食べても太らないという理由から憧れがちな「胃下垂」。
しかし胃下垂には沢山のデメリットと知られざる症状があったのです。胃下垂になると太らない理由やなりやすい人の特徴、胃下垂のセルフチェック方法と症状、胃下垂の治し方・改善方法などを紹介します。
食べても太らない「胃下垂」とは
食べても食べても太らないイメージの胃下垂。
大食いなのに細い人やテレビに出ているフードファイターに胃下垂の方が多いので、こういったイメージがありますよね。
こういったダイエット面の良いイメージから「胃下垂になりたい!」という方は少なくないのではないでしょうか?
そもそも「胃下垂」とは、胃が正常な位置と比べて、下部に垂れ下がった状態のことを言います。
通常であれば、みぞおちのあたりに胃は位置しているのですが、胃下垂の人は、おへそから下腹部あたりに胃が垂れ下がっています。
そして、食後はお腹がぽっこりと出てしまう特徴があります。
「胃下垂は太らない」というイメージから、憧れる人も多いのですが、異常な位置に胃があることで大きなデメリットが存在します。
まずは胃下垂について、しっかりと理解していきましょう。
胃下垂になると太らない理由
胃下垂になると、胃が正常な位置にないため、消化活動を行う役割のある蠕動運動(ぜんどう運動)という機能が働かなくなり、消化が正しく行えなくなります。
正常な方と比べて、1/3程度の消化機能となってしまい、その結果、食べたものの栄養素を吸収しづらくなります。
栄養を体が吸収しづらくなるため、いくら食べても食後に下腹部がぽっこりするだけで、太らないというわけです。
食べたものに含まれる栄養素を吸収しなくなるので、太りづらくはなりますが、もちろんその分、必要な栄養素も吸収できなくなります。
胃下垂の原因・なりやすい人の特徴
胃下垂になる原因は複数あると言われていますが、胃下垂になりやすい人には大きな特徴があります。
それは「細い人・スリムな体型の人」に多いというです。
よく胃下垂だから細くなると思われるのですが、胃下垂だから痩せるのではなく、「細いから胃下垂になりやすい」のです。
胃下垂の主な原因は、胃を支える腹筋を中心とした筋肉や脂肪が少ないために、胃を正しい位置で支えることができないことにあります。
「細い人・スリムな体型の人」は、胃を支える筋肉や脂肪の量が少ないので、胃が正しい位置より下がってしまい、胃下垂になりやすいのです。
ある日突然、胃下垂になる原因
細い人やスリムな体型の人に胃下垂の方が多いと説明しましたが、身体的特徴以外にも胃下垂になる原因がいくつかあります。
不安や過労などによる過度なストレス
精神的負担や過労などで胃炎になることがあるように、過度なストレスは私たちの胃に負担を与えます。
胃に大きな負担が掛かると胃が正しく機能しなくなり、その結果として、胃下垂になることがあります。
過度なダイエットや病気による筋肉量の減少
胃下垂の主な原因は、胃を支える腹筋や背筋などの筋肉量が少ないことにあります。
過度なダイエットをした場合や、運動できなくなるような病気にかかってしまった場合に、胃下垂になってしまうということがあります。
早食いや暴飲暴食
早食いや暴飲暴食をすると、想像以上に胃への負担が大きくなります。
短期的には問題ありませんが、長期間これを続けると体質によっては胃下垂になることがあります。
姿勢の崩れ
猫背になると胃を含む内臓が下に押し出され圧迫されてしまい、胃下垂になりやすくなってしまいます。
細身で長身、そして猫背という方は、要注意です。
妊娠・出産後の急な体重減少
妊娠で体重が増加した後に出産をし、その後に急な産後ダイエットで痩せた場合に、胃下垂になってしまったという方が多いです。
徐々にダイエットしていくことをおすすめします。
胃下垂のセルフチェック・診断方法
胃下垂のセルフチェックは簡単です。
通常より控えめな食事の後(腹八分目程度)に、お腹のどの位置が膨らんでいるかを確認してください。
全体的に膨らんでいたり中心部が膨らんでいたりする方は、胃下垂ではないでしょう。
これに対して、「おへそより下のお腹がぽこっと出ている」方は胃下垂の可能性ありです。いわゆる、下っ腹が出ている状態です。
この方法で分かりづらいという方は、仰向けで横になり、お腹を押してみましょう。
へその上から中央あたりが膨らんでいる人はグレーですが、へそより下が膨らむという方は、胃下垂になっている可能性が高いです。
さらに、この診断方法に合わせて、これから紹介する「胃下垂のデメリット」の症状に該当する方は、より可能性が高いと言えるでしょう。
胃下垂のメリット・デメリット
胃下垂は病気ではないものの、体の異常ということには変わりありません。
そのためメリットと言って良いかは分かりませんが、確かに、いくら食べても太りづらくなるという事実はあります。
ただし、ここで注意してほしいのは、太りづらくなるというメリット以上に、深刻なデメリットが沢山あるということです。
先ほど紹介した胃下垂になる原因を応用して、胃に負担を掛け消化異常を起こせば「胃下垂へのなり方」とすることはできるかもしれませんが、健康面で大きなリスクになります。
胃下垂のデメリット部分・悪い症状は沢山あるのですが、ここでは代表的なものを紹介します。
- 食後の胃のむかつき・胃もたれ
- 飲食後にげっぷや吐き気がある
- 栄養不足による肌荒れ・肌トラブル
- 下痢・便秘などの便通の異常
- 消化不良による口臭の発生
- 腰痛や腹痛、関節の痛み
- 冷え性
- 逆流性食道炎 など
胃下垂の知られざる深刻な症状
先ほど紹介した胃下垂が引き起こす症状は一般的なものですが、場合によっては、胃下垂が原因で恐ろしい病気になってしまうこともあります。
有名なものが上のお腹の内部画像にある「胃アトニー」です。
胃アトニーは、胃下垂と併発することが多く、なってしまうとさらに消化・吸収が悪くなってしまいます。
胃アトニーが併発した場合は、自分では治すことは難しいので治療が必要になります。
また、胃で正しく消化・吸収ができないために、私たちの身体は、なんとかしようと大量の胃酸を分泌するようになります。
この異常から胃酸過多になり、「胃炎」や「胃潰瘍」といった怖い病気まで引き起こす可能性があります。
さらに、胃下垂になると、慢性的に冷え性となり、女性が深刻な冷え性になると、子宮や前立腺まで冷えてしまい、「不妊」になってしまう可能性もあります。
胃下垂の治し方・改善方法
1)腹筋を中心とした筋トレをする
胃下垂の主な原因は、胃を支える腹筋(インナーマッスル)もしくは脂肪の量が少ないことにあります。
胃下垂の方にとっては思うように太ることも難しいので、腹筋運動をすることによって腹筋を中心とした筋肉をつけるのが良いでしょう。
おすすめの腹筋の鍛え方は、チューブトレーニングで腹筋を含む体幹全体(インナーマッスル)を鍛える方法です。
チューブはスポーツ店や100円ショップなどにも売っています。
また、いきなり筋トレをしても、なかなか続かない…!という方は、ウォーキングやランニング、自分の好きなスポーツをするだけでも胃下垂を治す効果はあります。
筋肉がつきづらい方はプロテインを合わせて摂ると良いでしょう。
2)姿勢を良くして猫背を改善する
猫背になると胃を含む内臓が圧迫されてしまい、下部に押しやられてしまい、胃下垂になってしまいます。
そこで、姿勢を良くし猫背を改善することで、圧迫がなくなるので胃が通常の位置に戻ってくれます。
姿勢の治し方は、難しい方法でなくても構いません。
日頃、立っている時や座っている時に意識しているだけでも効果があります。
ただし、注意したいのが、背中は反りすぎても良くないということ。
少し鳩胸になるくらいが胃下垂を治すのにはちょうど良いと言われています。
3)大食いをやめて食生活を見直す
いくら太らないからといって大食いをしてしまうと胃に大きな負担が掛かってしまい、いつまで経っても胃下垂は治りません。
まずは大食いをやめて食生活を、消化の良いもの・バランスの取れた食事に改善していくことをお勧めします。
また、大食いを防ぐには、早食いしないように意識することが重要です。
ゆっくり噛んで食べることで少量でも満腹感を得ることができます。
また、一気に食べてしまうと重さで胃が下に下がってしまうので、少量を複数回に分けて食べる方法もおすすめです。
4)ツボを押す
ツボを押すことでも、個人差はありますが、多少の効果を見込めます。
おへそから小指を縦に1本分上の位置に、「下脘」と呼ばれるツボがあるので、そこを指圧してましょう。
ツボを指圧することにより、内臓機能が向上し、胃の消化・吸収機能も良くなるので、胃下垂が改善される可能性があります。
ちなみに指圧よりも、お灸をするほうが効果的と言われています。
お灸は自宅ではなかなかできないので、ミニホッカイロで温めるなどでも効果は見込めます。
5)病院で治療する
ここまで紹介した治療法を実践しても改善されなかった症状の重い方は、病院で投薬治療することをお勧めします。
胃下垂は病気ではないので、病院行きづらいと思いがちですが、やはり病院で治療してもらうことが一番効果的です。
病院でレントゲンなどの診断を受ければ、胃下垂の深刻度も分かるはずです。
胃炎や胃腸炎になって手術が必要となってからでは遅いので、治らないとお悩みの方、一度検査してみることをお勧めします。
整体や逆立ちで胃下垂が治るは嘘?
ネットの情報では、整体や逆立ちで胃下垂は改善されるという記事をよく見ます。
整体に関しては、整体院の院長が「骨盤を矯正することで完全に治る」と、HPに宣伝してたりもします。
しかしながら、これらは医学的に根拠がないとされています。
整体や逆立ちで一時的に胃が通常の位置に戻ることで良くなったかのように感じることはありますが、あくまで一時的なものです。
胃が垂れ下がった状態なので、支える筋肉や脂肪がなければ、時間が経てば元に戻ってしまいます。
中には、「筋力トレーニングは不要。ホッピングで胃下垂が治る!」なんていう怪しい情報もあるので、騙されないようにしましょう。
また、漢方については、諸説ありますが、内臓の疲れを軽減するという意味では多少の効果があるかもしれません。
しかし劇的な効果は、見込めないので気をつけましょう。
胃下垂は憧れてはいけない!しっかりと治して健康的な食生活を
食べても太らないが故に「胃下垂になりたい」と憧れがちですが、実はたくさんのデメリットがあるのでした。
胃下垂は決してダイエットの味方ではありません。
むしろ健康被害を及ぼす病気の一歩手前のような症状です。
胃下垂の方にとっては、「太りたくても太れない」、「栄養が吸収できず体調を崩してしまう」ということは深刻な悩みです。
治すために、太り方を調べる方もいるほどです。
ここまで紹介したように、怖い部分も多い胃下垂ですが、逆にしっかりとした改善方法を実践すれば、生活習慣の見直しで治った人も少なくありません。
胃下垂にすでになっている人も、事前に予防したい人も、ぜひ今日からは健康的な食生活を心がけてくださいね。