もしかして、あなたは今こんな気持ちではありませんか?
練習に向かう足取りが重い。ジムの前に立っても、なかなかドアを開けられない。スパーリングで何度も倒され、自分の弱さばかりが目につく。「もう限界かもしれない」「才能がないのかもしれない」そんな思いが頭をよぎる。
実は、これを読んでいるあなたと同じような悩みを抱えた人を、私は格闘技歴10年以上の中で数え切れないほど見てきました。そして何より、私自身がその一人だったのです。
格闘技という厳しい世界で10年以上戦い続けてきた経験者として、今まさに辞めようか迷っているあなたに、絶対に知っておいてほしいことがあります。それは、あなたが感じている迷いや挫折感は、実は格闘技を続ける上で避けて通れない「成長の痛み」だということです。
なぜ多くの人が格闘技を辞めたくなるのか
格闘技は、他のスポーツとは根本的に異なる特殊性を持っています。それは「相手を倒す」「相手に倒される」という直接的な勝敗が常に突きつけられることです。
サッカーや野球なら、チーム戦なので個人の責任は分散されます。陸上や水泳なら、タイムという客観的な数字で成長を測ることができます。しかし格闘技は違います。マットの上で一対一で向き合い、技術、体力、精神力のすべてが露骨に現れてしまうのです。
私が格闘技を始めた当初、週2回のペースで通っていましたが、毎回のように先輩たちにボコボコにされていました。家に帰ると体中が痛み、鏡を見ると顔にアザができていることもありました。友人からは「なんでそんな痛い思いをしてまで続けるの?」と聞かれ、自分でも答えに困ることがありました。
格闘技を辞めたくなる理由は人それぞれですが、私の経験と多くの格闘技仲間との会話から、主に以下のような理由が挙げられます:
身体的な理由
- 練習がきつすぎて体がついていかない
- ケガが多く、治らないうちに次のケガをしてしまう
- 年齢的な衰えを感じて、若い人についていけない
精神的な理由
- いつまで経っても強くなれない気がする
- 才能がないと感じて自信を失う
- スパーリングが怖くて楽しめない
環境的な理由
- ジムの雰囲気が自分に合わない
- 指導者や先輩との関係がうまくいかない
- 仕事や家庭の事情で時間が取れなくなった
経済的な理由
- 月謝や用具代が家計を圧迫する
- 他にお金を使いたいことができた
これらの理由は、どれも真っ当なものです。無理して続ける必要はありませんし、辞めることが悪いことではありません。しかし、もしあなたの心の奥底に「本当は続けたい」という気持ちが少しでも残っているなら、この記事を最後まで読んでみてください。
格闘技を続けることで得られる「本当の価値」とは
格闘技を10年以上続けてきて、私が確信していることがあります。それは、格闘技で得られる最大の価値は「強さ」ではなく「自分自身との向き合い方を学ぶこと」だということです。
1. 逃げられない環境での成長
日常生活では、嫌なことや苦手なことから逃げることができます。しかし格闘技の練習中、特にスパーリングでは逃げることができません。相手が向かってきたら、何らかの対応をしなければなりません。
この「逃げられない状況」で培われる集中力と判断力は、格闘技以外の場面でも大いに役立ちます。仕事でプレッシャーのかかる場面、人間関係でのトラブル、人生の重要な決断を迫られた時など、格闘技で鍛えられた「逃げずに向き合う力」が発揮されるのです。
2. 失敗から学ぶ習慣の獲得
格闘技では、負けることや技をかけられることが日常茶飯事です。最初のうちは悔しさや恥ずかしさを感じるかもしれませんが、続けているうちに「なぜ負けたのか」「どこが悪かったのか」を冷静に分析する習慣が身につきます。
この習慣は、人生のあらゆる場面で応用できます。仕事でミスをした時、人間関係でうまくいかなかった時、新しいことにチャレンジして失敗した時など、感情的にならずに原因を分析し、次に活かすことができるようになります。
3. 継続する力の発見
格闘技は、短期間で劇的な変化が現れるスポーツではありません。地道な反復練習の積み重ねによって、少しずつ技術が向上していきます。この過程で、「継続することの力」を身をもって体験することができます。
私は格闘技を通じて、「才能がなくても、継続すれば必ず成長できる」ということを学びました。この学びは、格闘技以外の分野でも大いに役立っています。語学学習、資格取得、新しい技術の習得など、どんなことでも継続する自信を持てるようになったのです。
4. 自分の限界を知り、それを超える経験
格闘技では、自分の体力や技術の限界を常に感じることになります。「もうダメだ」と思った時に、もう一歩踏み出す経験を何度も積むことで、自分が思っているよりもずっと多くのことができることを知ります。
この経験は、人生の困難な場面で大きな支えとなります。「あの時あれだけきつい練習を乗り越えられたのだから、この程度の困難は乗り越えられる」という自信を持てるのです。
私が10年以上格闘技を続けられた理由
正直に言うと、私も何度も辞めようと思いました。特に印象に残っているのは、格闘技を始めて3年目の時です。
同期で始めた友人たちは皆、私よりも上達が早く、中には試合で好成績を残す人もいました。一方で私は、相変わらず練習では負けることが多く、「自分には才能がないのではないか」と深刻に悩んでいました。
その時期、私は2週間ほどジムに行かなくなりました。格闘技のことを考えるのも嫌になり、「もう辞めよう」と心に決めかけていました。
しかし、ある日偶然街で格闘技の試合をテレビで見る機会がありました。そこで戦っている選手の技を見て、「ああ、この技は練習でやったことがある」「この動きは私にもできる」と感じたのです。
その瞬間、私は気づきました。確実に成長していたのです。同期と比べて劣っているように感じていましたが、格闘技を始める前の自分と比べれば、明らかに強くなっていました。
この経験から、私は「他人と比較するのではなく、過去の自分と比較する」ことの大切さを学びました。そして、この考え方を身につけてからは、格闘技がずっと楽しくなったのです。
挫折を乗り越えるための具体的な方法
私が実践してきた、挫折を乗り越えるための方法をいくつか紹介します:
1. 小さな目標を設定する 「試合で勝つ」「黒帯を取る」といった大きな目標ではなく、「今日は最後まで練習についていく」「新しい技を一つ覚える」といった小さな目標を設定します。小さな達成感を積み重ねることで、モチベーションを維持できます。
2. 練習日記をつける その日に練習した内容、できるようになったこと、改善点などを簡単に記録します。後で読み返すと、自分の成長を客観的に確認できます。
3. 格闘技以外の楽しみを見つける 格闘技仲間との食事、新しい道着や用具の購入、格闘技の試合観戦など、練習以外の楽しみを見つけることで、格闘技との関わりを多角的に楽しめます。
4. 休息を取ることを恐れない 疲れた時や気分が乗らない時は、無理せず休むことも大切です。1週間や2週間休んだからといって、それまでの練習がすべて無駄になるわけではありません。
今辞めてしまうことのデメリット
格闘技を辞めること自体は悪いことではありませんが、今辞めてしまうことで失うものについても考えてみましょう。
1. これまでの努力が中途半端になる
格闘技は積み重ねのスポーツです。今まで身につけてきた技術や体力、精神力は、続けることで初めて花開きます。辞めてしまうと、これまでの努力が中途半端なまま終わってしまう可能性があります。
私の経験では、格闘技の真の面白さを感じられるようになったのは、始めてから4~5年経った頃でした。それまでは、正直言って「なぜこんなに苦しい思いをしているのか」と疑問に思うことも多かったのです。
2. 後悔の可能性
人生には「あの時続けていれば」という後悔がつきものです。格闘技を辞めた後、年月が経って「あの時もう少し続けていれば、違った結果になっていたかもしれない」と思う可能性があります。
3. 代替手段の見つけにくさ
格闘技で得られる経験は、他のスポーツや活動では代替が困難です。特に「相手と直接対峙する緊張感」「逃げられない状況での判断力」「身体的な限界に挑戦する経験」などは、格闘技特有のものです。
4. 自信の源泉を失う
格闘技を続けることで得られる自信は、他では得難いものです。「自分は困難に立ち向かえる」「厳しい状況でも諦めない」という自信を一度身につけると、人生のあらゆる場面でその恩恵を受けることができます。
格闘技を続けるための具体的なアドバイス
それでは、格闘技を続けるための具体的なアドバイスをお伝えします。これらは、私自身が実践してきたことであり、多くの格闘技仲間にも効果があったものです。
1. 練習の頻度や強度を調整する
「辞める」と「フルペースで続ける」の間には、多くの選択肢があります。
- 週3回から週1回に減らす
- スパーリングはせずに、技術練習だけにする
- 一般クラスではなく、初心者クラスに参加する
- グループレッスンではなく、個人レッスンを受ける
完全に辞めてしまう前に、これらの調整を試してみることをお勧めします。
2. 目標を再設定する
最初に設定した目標が現実的でなかった可能性があります。目標を以下のように再設定してみましょう:
技術面の目標
- 基本技を正確にできるようになる
- 特定の技を得意技として身につける
- 苦手な体勢からの脱出を覚える
体力面の目標
- 最後まで練習についていけるようになる
- 体重を○kg減らす(増やす)
- 柔軟性を向上させる
精神面の目標
- スパーリングで緊張しないようになる
- 負けても落ち込まないようになる
- 自分から積極的に技をかけられるようになる
3. 環境を変える
同じジムで行き詰まりを感じているなら、環境を変えることも一つの解決策です:
- 他のジムの体験レッスンを受けてみる
- 違う格闘技種目にチャレンジしてみる
- 合宿やセミナーに参加してみる
- オンラインレッスンを併用してみる
新しい環境で新鮮な刺激を受けることで、モチベーションが回復することがあります。
4. 格闘技仲間とのコミュニケーションを深める
格闘技は個人技ですが、練習は多くの場合仲間と一緒に行います。仲間とのコミュニケーションを深めることで、格闘技の楽しさを再発見できます:
- 練習後に食事に行く
- 格闘技の話をする機会を増やす
- 一緒に試合観戦に行く
- SNSで格闘技の情報を共有する
私の場合、格闘技仲間との友情が、続ける大きなモチベーションの一つになっています。
5. 専門家に相談する
一人で悩んでいても解決しない問題は、専門家に相談することをお勧めします:
- インストラクターに率直に相談する
- スポーツ心理学の専門家に相談する
- 経験豊富な先輩に相談する
- 格闘技専門の治療院でケガの相談をする
客観的なアドバイスを受けることで、新しい視点が得られることがあります。
それでも辞めたい場合の判断基準
ここまで読んでも、それでも辞めたいと感じる場合もあるでしょう。そんな時の判断基準をお伝えします。
辞めても良いケース
1. 身体的な問題が深刻な場合
- 医師から格闘技の継続を止められている
- 慢性的なケガが治らず、日常生活に支障をきたしている
- 年齢的に無理が生じ、他の健康に悪影響を与えている
2. 人生の優先順位が明確に変わった場合
- 家族の介護が必要になった
- 仕事で重要なプロジェクトを任された
- 他にやりたいことが明確にある
3. 経済的に続けることが困難な場合
- 月謝を払うことで生活が苦しくなる
- 他に優先すべき支出がある
もう少し続けた方が良いケース
1. 感情的な理由の場合
- 一時的な挫折感や失敗による落ち込み
- 他の人との比較による劣等感
- スパーリングでの敗北による自信喪失
2. 明確な代替案がない場合
- 辞めた後に何をするか決まっていない
- 他に熱中できるものがない
- 時間を持て余すことになりそう
3. 周囲からの反対がある場合
- 家族や友人が続けることを勧めている
- インストラクターが期待をかけている
- 格闘技仲間が引き止めている
私からあなたへの最後のメッセージ
ここまで長い文章を読んでいただき、ありがとうございます。最後に、格闘技歴10年以上の経験者として、あなたに伝えたい最も大切なことをお話しします。
格闘技は確かに厳しいスポーツです。痛みも伴いますし、挫折も多いです。しかし、その厳しさの向こう側には、他では得られない貴重な経験と成長があります。
私は格闘技を通じて、多くのことを学びました。技術的なことはもちろんですが、それ以上に大切なのは「人生に立ち向かう姿勢」を学んだことです。困難から逃げずに向き合うこと、失敗から学ぶこと、継続することの力、自分の限界を知りそれを超えること。これらの学びは、格闘技をやめた後も一生の財産となっています。
もしあなたが今、辞めようかどうか迷っているなら、まずは一度立ち止まって考えてみてください。本当に辞めたいのか、それとも一時的な気持ちなのか。もし少しでも続けたい気持ちがあるなら、完全に辞める前に、ペースを落とすなどの調整を試してみてください。
そして、格闘技を始めた時の気持ちを思い出してみてください。きっとそこには、「強くなりたい」「自分を変えたい」「新しいことにチャレンジしたい」という純粋な気持ちがあったはずです。その気持ちを大切にしてください。
最終的にどのような決断をするにしても、それはあなた自身の人生です。他人に決めてもらうものではありません。しかし、もし迷っているなら、もう少しだけ続けてみることをお勧めします。格闘技の本当の面白さや価値は、続けた人にしか分からないものだからです。
この記事を読んで、「もう少し続けてみようかな」と思ったあなたに、今すぐできる3つのアクションを提案します:
アクション1:今の気持ちを整理する
紙とペンを用意して、以下のことを書き出してみてください:
- 格闘技を辞めたい理由
- 格闘技を続けたい理由
- 格闘技を始めた時の目標
- 今の自分の状況
- 理想の自分の姿
書き出すことで、自分の気持ちが整理され、適切な判断ができるようになります。
アクション2:信頼できる人に相談する
一人で悩まずに、以下のような人に相談してみてください:
- ジムのインストラクター
- 格闘技の先輩や仲間
- 家族や親しい友人
- 過去に同じような悩みを経験した人
他人の視点から見たアドバイスを聞くことで、新しい発見があるかもしれません。
アクション3:小さな変化を試してみる
いきなり大きな決断をするのではなく、まずは小さな変化を試してみてください:
- 練習頻度を調整する
- 新しい技にチャレンジする
- 違うクラスに参加してみる
- 格闘技関連のイベントに参加する
小さな変化でも、新鮮な刺激を受けることで気持ちが変わることがあります。
あなたの格闘技人生がより充実したものになることを、心から願っています。どのような決断をするにしても、それがあなたにとって最良の選択となりますように。
格闘技は人生を豊かにしてくれる素晴らしいスポーツです。もしもう少し続けてみる気になったら、私たちは仲間として、あなたの成長を心から応援しています。