「格闘技をやってみたいけど、もう歳だからなぁ…」
このような思いを抱えている人は意外と多いのではないでしょうか?
会社の帰り道、テレビで格闘技の試合を見たとき、SNSで友人の習い事の投稿を見たとき…「自分も昔からやってみたかったな」という思いが頭をよぎることがあるはずです。
しかし、その思いとともに「でも、今からじゃもう遅いんじゃ…」という不安も湧いてくるのではないでしょうか。
結論から言いましょう。格闘技を始めるのに「遅すぎる」年齢はありません。
私は格闘技歴10年以上、アマチュア選手としてキックボクシングの試合に出場し、30代でボクシングのプロライセンス取得に向けて現役で練習している者です。これまで多くのジムを渡り歩き、様々な年齢の人が格闘技を楽しむ姿を見てきました。
そんな経験から断言できることがあります。それは「格闘技は年齢に関係なく、誰でも、いつからでも始められる」ということです。
なぜ大人になってからでも格闘技を始められるのか?
身体的な理由
「若い子に付いていけるわけがない…」
多くの方がそう思うかもしれません。確かに、10代や20代前半の若さあふれる身体能力には敵わない部分もあるでしょう。しかし、それは格闘技を楽しむうえでの絶対条件ではありません。
実は、30代、40代になってから始める格闘技には、若い頃には得られない多くのメリットがあるのです。
例えば:
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運動不足の解消: デスクワークが中心の現代社会では、年齢を重ねるごとに運動不足が深刻化します。格闘技は全身を使うワークアウトとして最高の選択肢の一つです。
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ストレス発散: 仕事や家庭でのストレスをパンチやキックで発散できる効果は絶大です。「ミットを叩く音」と「汗をかいた後の爽快感」は、言葉では表現できないほどの満足感を与えてくれます。
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生活習慣の改善: 練習に通うために早寝早起きするようになったり、パフォーマンスを上げるために食生活に気を配るようになったりと、自然と健康的な生活習慣が身につきます。
私が通っていたジムには、60代でキックボクシングを始めた男性がいました。彼はとても元気でパワフル。ミットもサンドバッグもバシバシ打ち込み、若い人に混じってマススパーリングもこなしていました。
彼との雑談で「この年齢でこんなに楽しい趣味ができて嬉しいです!」と笑顔で話していたことが今でも印象に残っています。その姿を見て、格闘技を始める年齢なんて関係ないのだと実感しました。
精神的な理由
年齢を重ねるからこそ得られる精神的な強みもあります。
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目的意識の明確さ: 若い頃と違い、なぜ格闘技をやりたいのかという目的が明確です。「ただなんとなく」ではなく、「健康のため」「自分への挑戦」など、具体的な目標を持つことで継続しやすくなります。
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忍耐力の高さ: 長年の社会人経験で培った忍耐力は、技術習得の際に大きな武器となります。若い人が挫折しやすい反復練習も、大人は粘り強く取り組める傾向があります。
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謙虚さ: 初心者として一から学ぶ姿勢を持てることは、実は大きな利点です。格闘技の世界では「初心者の心」が重視されます。年齢を重ねた方が「教えを素直に受け入れる」という点で、技術の上達が早いケースも少なくありません。
実際のところ、何歳からでも始められる格闘技の世界
「でも、実際のところどうなの?」という疑問にお答えしましょう。
様々な年齢層の実例
私がこれまでに見てきた、大人になってから格闘技を始めた方々の例をいくつか紹介します。
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32歳のサラリーマン:仕事のストレス解消のためにボクシングを始め、3年後にはジムの看板選手として試合に出場するまでに。
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45歳の主婦:子育てが一段落した後に柔術を始め、今では女性クラスのインストラクターとして活躍。
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38歳のIT技術者:デスクワークによる腰痛改善のために総合格闘技を始め、体重が15kg減量。健康診断の数値も劇的に改善。
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52歳の経営者:若い社員とのコミュニケーションを円滑にするためにキックボクシングを始め、今では社内イベントで模範演技を披露するほどに。
これらは特別な例ではありません。どのジムにも似たような事例があふれています。年齢は単なる数字に過ぎず、格闘技を始める情熱があれば、それだけで十分なのです。
年齢別の期待できる効果
年齢によって格闘技から得られる効果も異なります。
30代の場合
- 身体能力の維持・向上
- 新たな社交の場の獲得
- ストレス発散による仕事効率の向上
- 若々しさの維持
40代の場合
- 生活習慣病の予防
- 筋力低下の防止
- メンタルヘルスの改善
- 新たな目標を持つことによる生活の充実
50代以上の場合
- 関節の柔軟性維持
- 脳の活性化(新しい動きを覚えることで)
- コミュニティへの所属感
- 自信の回復
年齢に関係なく、格闘技は身体と心の両面に素晴らしい効果をもたらします。むしろ、年齢を重ねるからこそ、その恩恵をより強く実感できるのです。
でも、プロや試合を目指すなら年齢は関係あるの?
「趣味として始めるのは分かったけど、プロを目指したり試合に出たりするのは年齢的に無理なんじゃ…」
そんな疑問も持つかもしれません。確かに、この点については年齢が全く関係ないとは言えません。
例えばボクシングのプロテストは現在の規定上、34歳未満でないと受験できないという制限があります。また、一部の格闘技大会では出場資格に年齢制限を設けていることもあります。
しかし、だからといって「絶対にプロになれない」「試合に出られない」というわけではないのです。
プロを目指す場合
ボクシングのプロテストには年齢制限がありますが、キックボクシングやMMAなどの他の格闘技では、比較的年齢制限が緩やかな場合が多いです。
実際に、40代でプロデビューし、活躍している選手も少なくありません。有名な例では、ランディ・クチュアは47歳でUFCのタイトルマッチに挑戦しました。
もちろん、若い頃からやっている選手と比べれば不利な点もあるでしょう。しかし、それを覆すための武器として「人生経験」「精神的な強さ」「戦略的思考」などを磨くことで、十分に戦えるケースもあります。
アマチュア試合への出場
アマチュアの試合であれば、年齢制限はより緩やかです。多くの大会では40代、50代の選手のために「マスターズクラス」などが設けられていることもあります。
同年代同士で戦うことで、公平な競技が可能になっているのです。
私の知り合いにも、45歳から空手を始めて3年後に全国大会のマスターズクラスで優勝した方がいます。彼の言葉を借りれば「若い頃には気づかなかった技の本質を、人生経験を通して理解できたから」とのこと。
年齢はハンディキャップではなく、ある意味では武器にもなり得るのです。
周囲の声を気にして始められない人へ
「格闘技を始める年齢が遅い」という悩みの裏には、周囲の目が気になるという心理があるのではないでしょうか。
- 「今さら始めるのか」とバカにされるのではないか
- 若い人たちの中で浮いてしまうのではないか
- 恥をかくだけではないか
こうした不安は自然なものですが、実際のジムの現場ではそのような心配は無用です。
格闘技ジムの実態
実は、多くの格闘技ジムには様々な年齢層の人が通っています。プロを目指す若者だけでなく、健康維持のために通う中高年、趣味として楽しむサラリーマン、ダイエット目的の女性など、実に多様な人々が共存しています。
ジムのインストラクターも、そうした多様性を理解しており、一人ひとりの目的や体力に合わせた指導をしてくれます。
私がこれまで通ったどのジムでも、年齢を理由にバカにする人は一人もいませんでした。むしろ「この歳から新しいことに挑戦する勇気がすごい」と尊敬されることの方が多いのです。
年齢を武器に変える考え方
もし、周囲にネガティブなことを言う人がいたとしても、その人は恐らく何かに一生懸命打ち込んだことがない人なのでしょう。そんな人の言葉に振り回される必要はありません。
むしろ、「若くなければダメ」という固定観念に縛られず、年齢を重ねたからこそ得られる経験や知恵を武器にしていきましょう。
年齢は単なる数字に過ぎません。本当に大切なのは、今の自分の気持ちです。「やりたい」という情熱があれば、それが最も重要なのです。
どうやって始めればいいの?初心者へのステップバイステップガイド
さあ、ここまで読んで「よし、始めてみよう!」と思った方のために、具体的な始め方を紹介します。
Step 1: 自分に合った格闘技を選ぶ
格闘技には様々な種類があります。
- ボクシング: パンチのみを使う競技。有酸素運動としての効果が高く、シンプルな動きから始められる。
- キックボクシング: パンチに加えて足技も使用。全身運動として効果的。
- 柔術/柔道: 投げ技や関節技を中心とした格闘技。力の弱い人でも技術で勝てる点が魅力。
- 空手: 伝統的な武道としての側面も持つ。形(カタ)の練習から始められるため、いきなり対人練習が苦手な人にも向いている。
- 総合格闘技(MMA): 様々な格闘技の要素を取り入れた総合的な格闘技。
自分の目的や体力、興味に合わせて選びましょう。健康維持が目的なら有酸素運動効果の高いボクシングやキックボクシング、武道としての精神面も学びたいなら空手や柔道、効率的な護身術を身につけたいなら柔術やMMAなど、目的によって選ぶ種目も変わってきます。
Step 2: 近くのジムを探す
インターネットで「〇〇市 △△格闘技 ジム」などと検索すれば、近くのジムが見つかるでしょう。
選ぶポイントとしては…
- アクセスの良さ: 通いやすさは継続の鍵です。自宅や職場から近いジムを選びましょう。
- 雰囲気: 見学や体験入会で雰囲気を確かめることが大切。初心者に優しい雰囲気かどうかをチェック。
- コース設定: 初心者向けのクラスがあるか、平日夜や週末など自分のスケジュールに合うクラスがあるかを確認。
- 料金体系: 月謝だけでなく、入会金、ウェア代なども含めた総コストを確認。
多くのジムでは体験入会制度を設けています。まずは体験入会で実際の雰囲気を確かめることをお勧めします。
Step 3: 必要な道具を揃える
基本的な道具は以下の通りです…
- ウェア: 動きやすいTシャツやハーフパンツ。専用のウェアはジムで購入できることも多い。
- グローブ: ボクシングやキックボクシングの場合、オンスという単位で重さが選べる。初心者は12〜14オンスが一般的。
- バンテージ: 手首を保護するための布。
- マウスピース: 歯を保護するためのもの。
- シューズ: 専用シューズがあると動きやすい(特にボクシング)。
全てを一度に揃える必要はありません。ジムによっては貸し出し用の道具もあるので、まずは最低限から始めて、徐々に自分の道具を揃えていくとよいでしょう。
Step 4: 適切な心構えを持つ
大人になってから始める際に重要なのは、焦らないことです。
- 比較しない: 若い人や経験者と自分を比較しないこと。自分のペースで上達を楽しみましょう。
- 継続を重視: いきなり高い目標を立てるのではなく、まずは「週に2回3か月続ける」など、継続することを第一の目標にしましょう。
- 体調管理: 若い頃より回復に時間がかかることを理解し、適切な休息を取ることも大切です。
Step 5: コミュニティに参加する
格闘技の醍醐味の一つは、同じ志を持つ仲間との絆です。積極的にジムのメンバーと交流しましょう。
年齢や職業、バックグラウンドの異なる人々と出会えることも、格闘技の大きな魅力の一つです。新たな人間関係が、モチベーション維持にもつながります。
30代、40代から始めた人たちの声
実際に大人になってから格闘技を始めた方々の声を紹介します:
「34歳でキックボクシングを始めました。最初は周りの若い子についていけるか不安でしたが、3年経った今では体重が10kg減り、体脂肪率も半分になりました。何より自信がついたことが一番の収穫です」(37歳・会社員)
「41歳で柔術を始めました。子どもと一緒に通っています。最初は子どものほうが上達が早くて悔しい思いもしましたが(笑)、今では家族の共通の話題になり、絆が深まりました」(45歳・自営業)
「38歳でボクシングを始め、42歳でアマチュア大会に出場しました。負けはしましたが、人生で最も充実した経験の一つです。今では職場の後輩も誘って一緒に通っています」(44歳・公務員)
こうした声からも分かるように、格闘技は単なるスポーツ以上の価値をもたらしてくれます。
さあ、新しい一歩を踏み出そう!
ここまで読んだあなたは、きっと格闘技を始めることへの不安が少し和らいだのではないでしょうか。
最後にもう一度言います。格闘技を始めるのに遅すぎる年齢などないのです。
むしろ、仕事や家庭、人間関係など、様々な経験を積んだ大人だからこそ、格闘技から得られるものは大きいと言えるでしょう。
「いつかは始めたい」と思っていた「いつか」は、実は今日かもしれません。明日ではなく、今この瞬間から行動を起こすことが、新しい自分との出会いにつながるのです。
まずは近くのジムを検索して見学に行く。たったそれだけで、あなたの人生は新しい局面に入るかもしれません。
人生は一度きり。後悔のないよう、心の声に耳を傾け、自分の可能性に挑戦する勇気を持ちましょう。
あなたの格闘技ライフが、かけがえのない経験となることを心から願っています。
著者プロフィール 格闘技歴10年以上。アマチュア選手としてキックボクシングなどの試合に出場経験あり。30代にしてボクシングのプロライセンス取得に向けて現役で練習中。