バスケであれば『スラムダンク』、バレーであれば『ハイキュー!』というように、スポーツを題材に描かれている漫画は世の中にたくさんあります。

格闘技について描かれている漫画もたくさんありますが、その中で格闘技歴10年以上の僕でもとても興味深く読めたのは、『ホーリーランド』という作品です。

今回は、この作品の概要と魅力をご紹介したいと思います。

『ホーリーランド』とは

2000年~2008年にかけて『ヤングアニマル』とう漫画雑誌に掲載されていた作品です。

いじめられっ子で引きこもりの男子高校生である神代ユウが、やることがないのでたまたまボクシングの本で見たワン・ツーをひたすら自分の部屋で練習していたら、街で絡んできた不良をそれで倒してしまい、そこから様々な不良や格闘技経験者と喧嘩していくことになる…という物語です。

基本的には夜の街が舞台であり、路上での喧嘩が題材となっています。

大体の格闘漫画や喧嘩漫画の主人公は、格闘技経験者だったり不良であることが多いのですが、神代ユウはどちらでもないただの高校生という点が特徴です。

『ホーリーランド』の魅力

この漫画では、デタラメに強いキャラクターがおらず負ける時はしっかり負けますし、様々な格闘技経験者が喧嘩に参戦しています。

路上の喧嘩はルールなどないので、1対1でお互い素手同士なんてことはなく、武器は普通に使いますし複数人で襲いかかるということもザラにあります。そんな中で無類の強さを誇るなんて、同じ人間同士ではなかなかありません。

武器を持った相手とどう戦えばいいのか、複数人を相手にしなければならない時はどうするべきか。路上という場所をどのように活かして戦うのか。

そんな数々のシチュエーションが物語の中で出てくるのですが、その戦い方がとても現実に則しています。

つまり、喧嘩についての描写が他の漫画に比べてとてもリアルなのです。

本作では喧嘩の場面で随所に、作者による解説のナレーションが入ります。

格闘技を喧嘩に使っている場面でのナレーションが「なるほど格闘技を喧嘩で使うとこういうことも有り得るのか!」ということを気付かせてくれます。

普段、格闘技をやっている人はこれを喧嘩に使ったらどうなるかを妄想することが1度はあると思いますが、その妄想が具現化されています。

喧嘩と格闘技という似て非なる両者が交わっており、読んでいると思わずワクワクしてきます。

暴力と格闘技のリアルが描かれている

作品の雰囲気は全体的に暗く、不良、路上での喧嘩、ヤ○ザや違法薬物などアンダーグラウンドな要素が満載で、その中に存在する縄張り争いや利権争いといった人間のどうしようもない部分が散りばめられています。

主人公の神代ユウは、自分から喧嘩を吹っ掛けることはせず、自分に絡んできた相手とやむなく戦うこととなります。

しかしそれで負けてしまった連中はあらゆる手で報復をしようとして、本人だけでなく周囲をどんどん巻き込んだ大問題に発展していきます。

この辺りは不良にありがちなパターンですが、後半では不良だけでなく主人公の噂を聞き付けた現役の格闘家も介入してきて、まさに『強さ』という1点が彼等を結びつけていきます。

この作品を読むと、「喧嘩に強い」というのが決して良いことではないということ、「暴力」と「格闘技」の境界線がいかに曖昧なのかを感じます。

全18巻構成となっており、割とスラスラ読みやすい作品だと思いますので、喧嘩と格闘技について興味がある人は1度読んでみることをオススメします。