「プロの格闘家」と聞くと、何だかカッコいいイメージを抱きませんでしょうか。
テレビで観る華やかな姿、鍛え上げられた肉体、異性にモテそうという理由から、その存在に憧れる人も多いと思います。
しかし、プロの格闘家になるということは、それなりのリスクを背負うことにもなります。
僕はプロボクサーのライセンスを所有しているだけですが、そんな端くれでもプロの格闘家がいかにシビアな世界に身を置いているか、これまで多くのプロの格闘家を間近で見てきて痛感しました。
この記事では、これからプロの格闘家を目指そうとしている人に、目指すのであれば知ってしておくべきことを6つ解説します。
もしこれを読んで「自分には出来そうにないな・・・」と思ったら、やめておいた方が良いでしょう。
大きく稼げるのは一握り
彼等の華やかな姿を見ていると、「さぞかしたくさん稼いでいるんだろう」と思っている人もたくさんいます。
確かに世間に広く認知されるくらいの存在になれば、様々なオファーが来て格闘技以外でもお金を稼げます。
本業の格闘技でもファイトマネーが格段に跳ね上がり、生活は大きく潤うでしょう。
しかし、そんな風になれるのは数えきれないほどいる格闘家の中の、ほんのひと握りです。
多くはアルバイトなどで生計を立てながら、練習に明け暮れる毎日。
勝てず・稼げず・モチベーションが保てず、人知れず辞めていく格闘家がたくさんいます。
泥臭い中からいつ華やかな世界に行けるか分かりませんし、そもそも行けるかすら分かりません。
減量も試合も過酷
プロの格闘家として試合をすることになれば、仕事なのでいい加減はことはできません。
契約体重を守るために減量を行い計量をクリアし、その上で試合に臨むことになります。
言葉にするとシンプルですが、やってみると非常に過酷です。
減量中の食事は調整が欠かせないため、好きなものをお腹いっぱい食べることはできません。
落とす体重量にもよりますが、生活を節制しながらキツい練習をこなすのは、本当に辛いことです。
そうして無事に計量をクリアしても、本番となる試合で相手と戦い、勝たなければなりません。
いわば減量と試合の2つで勝負することになるため本当に苦しいです。
僕もジムでプロの減量中の姿と試合前の姿をたくさん見てきましたが、まさに命を賭けていると思いました。
死ぬ可能性もある
格闘技の試合は、極端に言えば相手と本気で殴り合うことになります。
もちろん主催者側も細心の注意を払い安全策を講じていますが、何が起こるか分かりません。
最悪の場合、相手の攻撃で死ぬ可能性だってゼロではないのです。
現に試合前は、アマチュアでさえ「どんなケガなどをしても、主催側は責任は負わない」という誓約書に同意することを求められます。
プロとなれば、そのリスクはアマチュアに比べて、遥かに高くなります。
生半可な気持ちで挑めば、負けるだけではすまないかもしれません。
しかも現役のうちはそれを何度も行うわけです。
そうまでしてプロの格闘家としてやっていけるか、自分自身とよく相談する必要があるでしょう。
現役でいられる時間は長くない
プロの格闘家は、身体に負うダメージが非常に大きいです。
普段の練習のハードさはもちろん、試合では相手と殴り合い、そんなことを続けるのだから当然です。
今でこそ40代でも現役で居続ける人はいますが、大半は20~30代のうちに引退していきます。
また、プロボクサーのライセンスは37歳で自動的に失効するなど、自分がやりたくても様々な事情からやれないことも。
つまりどれだけ努力しても、いつまで現役でいることができるかは分かりません。
そうなれば必然的に引退後の生活の方が長くなるので、後々どうするか(セカンドキャリア)をしっかり考えておく必要があります。
しかし格闘技しかやってきていなければ、自分に何ができるか・何をすればいいかも分からなくなってしまう可能性も。
そうした不安や悩みとも戦いながら、やっていかなければならないのです。
仕事を2つ抱え続ける覚悟
既に触れた通り、プロの格闘家の大半は格闘技をしつつアルバイト等で生計を立てています。
両方とも仕事としてやるわけで、しっかり両立させなければなりません。
どれだけ格闘技の練習で疲れていようがアルバイトを休むことはできませんし、その逆も然りです。
格闘技だけで生計を立てられるようになるか、引退するまではそんな生活をずっと続けるわけです。
それがどれほど過酷なものか、やってみなければ実感はできません。
しかし2つの仕事を抱えていく自分を想像して、両立させていけるかはじっくり考える必要があります。
自分を信じて続けられるか
プロの格闘家として成功するには、ひたすら努力し続けるしかありません。
その過程では、心が折れそうになる時が何度も訪れるでしょう。
それらを全て乗り越えていくには、最後まで自分を信じ続けられるかにかかっています。
「俺はやれる!」と自信を持ち、どんな相手にも勝っていくしか道はないのです。
たとえプロの格闘家になっても、道半ばで多くの人が消えていきます。その事実を知ってなお目指す以上は、甘えは許されませんし妥協もできません。
自分の一生を懸ける覚悟を持ってやれるのか、今1度自分と向き合ってみましょう。