テレビで華やかに活躍する格闘家たちを見て、「自分もあんな風になりたい」と憧れを抱いた経験はありませんか?鍛え上げられた美しい肉体、観客からの熱い声援、勝利の瞬間の達成感…。確かに、プロの格闘家という存在には多くの人を魅了する要素があります。
しかし、その華やかな世界の裏側には、一般の人には想像もつかないほどの厳しい現実が待っています。プロボクサーのライセンスを持つ私が、これまで間近で見てきた数多くのプロ格闘家たちの姿を通して感じたのは、この世界がいかにシビアで過酷なものかということでした。
もしあなたが「なんとなくカッコいいから」「モテそうだから」といった軽い気持ちでプロの格闘家を目指しているなら、今すぐにその考えを改めてください。プロの格闘家になるということは、人生をかけた覚悟と犠牲を伴う決断なのです。
この記事では、プロの格闘家を目指すあなたが絶対に知っておくべき6つの現実を、包み隠さずお伝えします。これらの事実を知っても「それでも自分はやり抜く」と確信できるなら、あなたには挑戦する価値があるかもしれません。
プロ格闘家の世界で本当に起こっていること
1. 経済的成功を手にするのは「一握り中の一握り」
プロの格闘家と聞くと、多くの人は高額なファイトマネーを想像するでしょう。確かに、世間に広く認知されるトップレベルの選手になれば、本業の格闘技だけでなく、テレビ出演、CM出演、書籍出版など、様々な収入源を得ることができます。
しかし、現実はそう甘くありません。プロの格闘家として登録されている選手は数え切れないほどいますが、格闘技だけで生計を立てられるのは、そのうちの本当にわずかな人数です。多くの選手は、アルバイトや派遣労働で生活費を稼ぎながら、練習に明け暮れる毎日を送っています。
具体的な数字を挙げると、プロボクサーの場合、日本全国で約3000人のライセンス保持者がいますが、格闘技だけで年収300万円以上を稼げているのは、おそらく100人にも満たないでしょう。つまり、97%以上の選手は、他の仕事との二足のわらじを履き続けなければならないのです。
さらに厳しい現実として、多くの選手は勝てず、稼げず、モチベーションを保てずに人知れず引退していきます。華やかな世界に到達できるかどうかは完全に未知数であり、むしろ到達できない可能性の方が圧倒的に高いのです。
2. 減量と試合という「二重の地獄」
プロの格闘家として試合をするということは、まず契約体重をクリアする減量、そして実際の試合という二つの関門を乗り越えなければなりません。これらは単に「体重を落とす」「相手と戦う」という単純なものではありません。
減量期間中は、食事制限が日常の全てを支配します。好きなものを好きなだけ食べることはできず、水分摂取すら厳しく管理されます。体重を落とすための有酸素運動と、筋力を維持するための筋力トレーニング、そして技術練習を同時に行わなければなりません。睡眠不足、栄養不足、慢性的な疲労状態の中で、精神的にも肉体的にも限界ギリギリの状態が続きます。
私がジムで見てきた減量中の選手たちの姿は、まさに「生きる屍」でした。顔色は土気色で、常にイライラしており、集中力も低下している。それでも計量をクリアするために、サウナスーツを着て走り込みを続ける姿は、傍から見ていても痛々しいものでした。
そして、無事に計量をクリアしても、本番はこれからです。試合では相手と本気で殴り合い、勝利を掴まなければなりません。減量で消耗した体と精神で、最高のパフォーマンスを発揮しなければならないのです。
3. 命の危険と隣り合わせの職業
格闘技の試合は、極端に言えば合法的な暴力の応酬です。主催者側も安全対策を講じていますが、それでも重大な事故が起こるリスクは常に存在します。
実際に、格闘技の試合中や試合後に命を落とす選手は、残念ながら後を絶ちません。脳震盪、頭部外傷、内臓損傷など、一歩間違えば生命に関わる怪我を負う可能性があります。
アマチュアの試合でさえ、参加者は「いかなる怪我や事故についても、主催者は責任を負わない」という誓約書にサインすることを求められます。プロになれば、そのリスクは格段に高くなります。相手もプロですから、攻撃の威力も桁違いです。
さらに、現役中はこのような危険を何度も経験することになります。一度や二度ではなく、年に数回、時には十数回もリングに上がり、命の危険と隣り合わせの戦いを続けなければならないのです。
4. 短すぎる現役生活と不透明な将来
プロの格闘家の現役期間は、他の職業と比べて圧倒的に短いのが現実です。身体に蓄積されるダメージは計り知れず、どれだけ体調管理に気を使っていても、加齢とともにパフォーマンスは確実に低下していきます。
例えば、プロボクサーの場合、ライセンスは37歳で自動的に失効します。これは安全性を考慮した措置ですが、選手にとっては強制的な引退を意味します。他の格闘技でも、40代まで現役を続ける選手はいますが、大半は20代後半から30代前半で引退していきます。
つまり、どれだけ努力しても、現役でいられる時間は限られているのです。そして、引退後の人生の方が圧倒的に長くなります。格闘技しかやってこなかった選手が、引退後にどのような職業に就くのか、どのようにして生計を立てていくのか、これは非常に深刻な問題です。
現役中は練習と試合に集中するあまり、他のスキルを身につける時間がありません。引退後に「自分には何ができるのか」「何をすればいいのか」と途方に暮れる元格闘家は珍しくありません。セカンドキャリアの準備をしながら現役生活を送るのは、想像以上に困難なことなのです。
5. 永続する「二足のわらじ」の過酷さ
前述したように、プロの格闘家の大半は格闘技だけでは生計を立てられません。そのため、アルバイトや派遣労働といった他の仕事と両立させなければなりません。
これは単純に「仕事を2つ掛け持ちする」というレベルの話ではありません。格闘技もアルバイトも、どちらも手を抜くことは許されません。練習で疲れ果てていても、アルバイトは休めません。アルバイトで長時間働いた後でも、練習をサボることはできません。
特に試合前の調整期間は、この両立が極めて困難になります。減量で体力が低下している状態で、通常通りの労働をこなさなければならないのです。雇用主に理解があればまだしも、そうでなければ仕事を失うリスクもあります。
私が知っている選手の中には、夜勤の警備員をしながら朝に練習し、昼間は試合のビデオを見て研究し、夕方からまた練習をして、夜にはまた警備員の仕事に向かうという生活を何年も続けている人がいます。このような生活が、格闘技だけで生計を立てられるようになるまで、あるいは引退するまでずっと続くのです。
6. 揺るぎない自信と継続力の必要性
プロの格闘家として成功するためには、技術や体力だけでなく、強靭な精神力が不可欠です。敗北、怪我、経済的困窮、将来への不安など、心が折れそうになる出来事が次々と襲いかかります。それらを全て乗り越えていくには、最後まで自分を信じ続けられる力が必要です。
「自分はやれる」「必ず成功する」という確信を持ち続けることができるか。これが、プロの格闘家として生き抜けるかどうかの最大の分かれ道です。
現実的に考えて、プロの格闘家になっても、その大部分は道半ばで諦めることになります。華やかな世界に到達できるのは、本当にごく一部の選手だけです。この厳しい現実を知っていても、「それでも自分は違う」と信じ続けられるか。
甘えは許されませんし、妥協もできません。一度この道を選んだら、後戻りは難しいのです。自分の人生を懸ける覚悟を持ってやれるかどうか、今一度深く考えてみる必要があります。
それでもプロの格闘家を目指すあなたへ
ここまで厳しい現実をお伝えしましたが、それでも「自分はプロの格闘家になりたい」と思うあなたには、きっと特別な何かがあるはずです。その気持ちを大切にしながら、最短でプロになるための戦略を考えてみましょう。
どの格闘技が最もプロになりやすいのか?
格闘技にはボクシング、総合格闘技、キックボクシング、相撲など様々な種類がありますが、「プロになりやすさ」という観点から見ると、それぞれに特徴があります。
ボクシングは世界的に最も普及している格闘技の一つで、プロテストの制度も確立されています。しかし、それゆえに競争も激しく、プロになったとしても試合を組んでもらうのが困難な場合があります。
総合格闘技(MMA)は比較的新しい格闘技で、まだ発展途上の分野です。そのため、他の格闘技経験者が転向してくるケースが多く、純粋な初心者には厳しい面があります。
キックボクシングは日本独自の発展を遂げた格闘技で、プロテストの基準も比較的明確です。ボクシングに比べて競技人口が少ないため、プロになるハードルはやや低めかもしれません。
相撲は日本の国技であり、プロ(力士)になるための道筋は明確です。しかし、身長・体重の制限があり、また非常に特殊な世界であるため、一般的な格闘技とは大きく異なります。
最も現実的な選択肢としては、キックボクシングまたはボクシングをおすすめします。どちらも歴史があり、プロテストの制度が確立されており、ジムも全国に多数存在します。
最短でプロになるための5つのステップ
ステップ1: 基礎体力の向上(3-6ヶ月) 格闘技を始める前に、まず基礎体力を身につけましょう。ランニング、筋力トレーニング、柔軟性の向上など、どの格闘技にも共通する基礎能力を高めます。
ステップ2: 適切なジム選び(1ヶ月) プロを目指すなら、プロ選手を輩出した実績のあるジムを選ぶことが重要です。設備、指導者の質、練習環境を慎重に検討しましょう。
ステップ3: 基本技術の習得(6-12ヶ月) 基本的なパンチ、キック、ディフェンスなどの技術を徹底的に身につけます。この段階では量より質を重視し、正確な技術を習得することが大切です。
ステップ4: 実戦経験の積み重ね(12-18ヶ月) アマチュアの試合に積極的に参加し、実戦経験を積みます。勝敗よりも経験値を重視し、多くの相手と戦うことで自分の実力を把握します。
ステップ5: プロテスト合格(18-24ヶ月) 十分な実力がついたら、プロテストを受験します。各団体によって基準は異なりますが、一般的には技術試験、体力試験、実技試験があります。
成功確率を高める3つの秘訣
秘訣1: 専門性を極める 一つの格闘技に集中し、その分野のスペシャリストになることを目指しましょう。器用貧乏になるよりも、一つの分野で圧倒的な実力をつけることが重要です。
秘訣2: メンタルトレーニングの重視 技術や体力だけでなく、精神面の強化も不可欠です。プレッシャーに負けない心、逆境を乗り越える力、集中力の維持など、メンタル面での準備を怠らないでください。
秘訣3: 戦略的なキャリア設計 プロになることがゴールではなく、プロとしてどのような選手になりたいかを明確にしましょう。その目標に向かって、計画的にキャリアを積み重ねることが成功への近道です。
現実的な目標設定の重要性
プロの格闘家を目指すなら、現実的な目標設定が欠かせません。「世界チャンピオンになる」という大きな夢を持つのは素晴らしいことですが、まずは「地区チャンピオンになる」「国内ランキング入りする」といった中間目標を設定することが重要です。
目標は具体的で測定可能なものにしましょう。「強くなる」ではなく「1年以内にアマチュアの試合で5勝する」「2年以内にプロテストに合格する」といった明確な目標を設定することで、モチベーションを維持しやすくなります。
また、目標達成のための期限も設けましょう。「30歳までにプロとして一定の成果を出せなければ引退する」といった区切りを設けることで、集中力を高めることができます。
サポート体制の構築
プロの格闘家を目指すなら、一人では不可能です。優秀なコーチ、トレーナー、栄養士、マッサージ師など、専門家のサポートを受けることが必要です。
また、家族や友人の理解と協力も欠かせません。練習時間の確保、経済的支援、精神的サポートなど、周囲の協力なしには成功は困難です。
特に重要なのは、メンター(指導者)の存在です。技術的な指導だけでなく、プロとしての心構え、業界の情報、キャリアアドバイスなど、様々な面でサポートしてくれる人物を見つけることが成功への鍵となります。
経済的準備の重要性
プロの格闘家を目指すなら、経済的な準備も欠かせません。練習費、試合参加費、栄養補給費、医療費など、多くの費用が必要になります。
特に初期段階では収入が見込めないため、最低でも2-3年分の生活費を蓄えておくことをおすすめします。また、怪我や病気に備えて、適切な保険に加入することも重要です。
可能であれば、格闘技に理解のある職場で働くことも検討しましょう。練習時間の確保がしやすく、怪我をした際の理解も得やすくなります。
今すぐ始めるべき5つのアクション
ここまで読んでいただいて、それでも「プロの格闘家になりたい」という気持ちが変わらないあなたには、すぐに実行すべき具体的なアクションをお伝えします。
アクション1: 自分の覚悟を確認する
まず、紙に「なぜプロの格闘家になりたいのか」を書き出してください。動機が明確でなければ、厳しい現実に直面した時に挫折してしまいます。
次に、「プロになるために何を犠牲にできるか」を具体的に書き出してください。時間、お金、人間関係、趣味など、様々な犠牲を払う覚悟があるかを確認しましょう。
最後に、「失敗した時のリスク」を考えてください。プロになれなかった場合、大きな怪我をした場合、経済的に困窮した場合など、最悪のシナリオを想定し、それでも挑戦したいかを自分に問いかけてください。
アクション2: 情報収集と現地調査
インターネットで情報を集めるだけでなく、実際に格闘技ジムを訪問してください。見学や体験レッスンを通じて、現実的な雰囲気を肌で感じることが重要です。
可能であれば、現役のプロ選手や元プロ選手と話す機会を作ってください。彼らの経験談は、どんな本や記事よりも価値のある情報源になります。
また、プロの試合を生で観戦することも重要です。テレビでは伝わらない迫力や緊張感を体感し、自分が本当にその世界に身を置きたいかを確認してください。
アクション3: 基礎体力の向上を開始
今すぐにでも基礎体力作りを始めてください。ランニング、筋力トレーニング、柔軟性の向上など、どの格闘技にも共通する基礎能力を高めましょう。
具体的には、週3回以上の有酸素運動、週2回以上の筋力トレーニング、毎日のストレッチを習慣化してください。3ヶ月後には明らかな変化を感じられるはずです。
また、食事管理も同時に始めましょう。プロの格闘家にとって体重管理は生命線です。今のうちから適切な食事習慣を身につけることが、将来の成功に直結します。
アクション4: 経済的準備の開始
プロを目指すためには、相当な費用がかかります。今すぐに専用の貯金を始めてください。月々の目標貯金額を設定し、確実に実行しましょう。
また、現在の仕事を続けながら格闘技を学ぶ場合は、時間管理スキルを向上させる必要があります。効率的な時間の使い方を身につけ、練習時間を確保できるようにしてください。
可能であれば、格闘技に理解のある職場への転職も検討してください。理解のある環境で働くことで、より集中して格闘技に取り組むことができます。
アクション5: サポート体制の構築
家族や友人に、あなたの目標を伝えてください。彼らの理解と協力なしには、成功は困難です。最初は反対されるかもしれませんが、あなたの本気度を示すことで、徐々に理解してもらえるでしょう。
また、メンターとなる人物を見つけてください。現役のプロ選手、元プロ選手、優秀なコーチなど、あなたを導いてくれる人物との出会いは、成功への大きな鍵となります。
最後に、同じ目標を持つ仲間を見つけてください。一人では挫折しやすいことも、仲間がいれば乗り越えられます。切磋琢磨し合える環境を作ることが、継続的な成長につながります。
最後に:あなたの決断が未来を決める
プロの格闘家を目指すということは、人生をかけた大きな挑戦です。成功の確率は決して高くありませんが、それでも夢を追い続ける価値があると信じるなら、今すぐ行動を開始してください。
時間は有限です。迷っている時間があるなら、その時間を練習に充てた方が有益です。ただし、軽い気持ちで始めるのではなく、覚悟を決めてから始めることが重要です。
この記事を読んで「自分には無理かもしれない」と思ったなら、それは正しい判断かもしれません。プロの格闘家になることは、誰にでもできることではありません。
しかし、「それでも自分は挑戦したい」と思うなら、その気持ちを大切にしてください。不可能を可能にするのは、才能だけでなく、諦めない心と継続的な努力です。
あなたがプロの格闘家として成功する日が来ることを、心から願っています。そして、その道のりがどれほど険しくても、最後まで自分を信じ続けてください。
今日から始めましょう。明日ではなく、今日から。あなたの格闘家人生の第一歩を、今この瞬間から踏み出してください。