「格闘技をやってる人って根性あるよね」

「うちの子に根性をつけさせたいから格闘技を習わせようかな」

こんな会話、あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか?

実は今、この常識が大きく覆されようとしています。格闘技歴10年以上、アマチュア選手として試合出場経験もあり、現在もプロライセンス取得を目指して現役で練習を続けている筆者が、あえて言わせていただきます。

格闘技で根性は身につきません。

「え?うそでしょ?」と思ったあなた。その反応こそが、この記事を最後まで読んでいただく価値がある証拠です。なぜなら、多くの人が抱いている格闘技に対する誤解を解き、本当に価値のある格闘技の学び方をお伝えできるからです。

 

令和の時代になっても、未だに体育会系の部活や職場では「根性を出せ!」「根性で何とでもなる!」という言葉が飛び交っています。そして残念ながら、格闘技の世界でも同様の精神論が根強く残っているのが現状です。

しかし、この古い考え方こそが、実は多くの人を格闘技から遠ざけ、本当の格闘技の楽しさや価値を見失わせている原因なのです。

昭和の部活動のような「とにかく耐えろ」「我慢しろ」「精神力で乗り切れ」という指導方法は、現代の科学的なトレーニング理論や心理学の知見から見ると、効果的ではないばかりか、時として有害でもあります。

それでは、なぜこのような誤解が生まれるのか、そして本当に格闘技で得られるものは何なのか、詳しく見ていきましょう。

 

「根性」の正体を科学的に解明する

まず、私たちが日常的に使っている「根性」という言葉の意味を明確にしましょう。

辞書によると、根性とは…

  1. その人の本来的に持っている性質
  2. 物事をあくまでやりとおす、たくましい精神

つまり、根性の大部分は「生まれ持った性質」であり、後天的に身につけるものではないということです。

格闘技を10年以上続けてきた経験から言えることは、根性があるから格闘技を続けられるのであって、格闘技をやったから根性がついたわけではないということです。

考えてみてください。もし格闘技で根性が身につくなら、指導者や教え方が適切である限り、格闘技をやっている人はみんな根性がつくはずです。そして、根性だけでなく、他の人格的な要素も身につき、全員が人格者になれるはずです。

しかし現実はどうでしょうか?格闘技界でも、輝かしい実績を持つ選手やベテランの指導者が問題を起こすケースが後を絶ちません。これが何よりの証拠です。

 

脳科学が教える「やる気」と「根性」の違い

最新の脳科学研究によると、人間の行動を支配しているのは「根性」ではなく「動機」と「報酬系」です。

格闘技を続けている人の多くが「根性がついた」と感じるのは、実は以下のメカニズムによるものです。

1. 明確な目標設定

  • 試合で勝ちたい
  • 技術を習得したい
  • 体を鍛えたい

2. 小さな達成感の積み重ね

  • 新しい技ができるようになった
  • 体力がついた
  • 自信がついた

3. 社会的承認

  • 仲間から認められる
  • 指導者から褒められる
  • 家族や友人から尊敬される

これらの要素が組み合わさって、辛い練習でも継続できる「モチベーション」が生まれます。これを「根性がついた」と勘違いしてしまうのです。

 

現代の格闘技指導で重視されるべき要素

では、根性論ではない現代的な格闘技指導とはどのようなものでしょうか?

1. 科学的なトレーニング理論 現代の格闘技は、スポーツ科学の知見を取り入れた効率的なトレーニング方法が確立されています。無闇に厳しい練習をするのではなく、目的に応じた適切な負荷をかけることが重要です。

2. 個々の能力に応じた指導 全員に同じ練習を強制するのではなく、個人の体力や技術レベル、目標に応じてカスタマイズされた指導が求められます。

3. 心理的サポート 選手のメンタルヘルスを重視し、適切なコミュニケーションと心理的サポートを提供することが現代の指導者には必要です。

4. 怪我の予防と管理 「痛みに耐えろ」ではなく、適切な怪我の予防と早期発見・治療が重要視されています。

 

根性論が格闘技に与える悪影響

根性論に基づいた指導は、以下のような深刻な問題を引き起こします。

1. 怪我のリスク増加 「痛みに耐えろ」という指導は、重大な怪我を見逃し、選手生命を脅かす可能性があります。

2. バーンアウト(燃え尽き症候群) 過度な精神的負荷は、選手のモチベーション低下や完全な燃え尽きを引き起こします。

3. 技術向上の阻害 考えることを放棄した「根性練習」は、技術の習得を妨げ、上達を遅らせます。

4. 人間関係の悪化 パワハラ的な指導は、選手と指導者、選手同士の信頼関係を破壊します。

 

格闘技で本当に得られるもの

それでは、格闘技で本当に得られるものは何でしょうか?

1. 目標設定と達成の技術 格闘技では、小さな目標から大きな目標まで、段階的に設定し達成していく過程を学びます。これは人生のあらゆる場面で応用できる貴重なスキルです。

2. 自己管理能力 練習スケジュール、食事管理、睡眠管理など、自分自身をコントロールする能力が身につきます。

3. 問題解決能力 技術的な課題や戦術的な問題に対して、論理的に分析し解決策を見つける能力が向上します。

4. 相手を理解する能力 格闘技は相手がいるスポーツです。相手の動きを読み、適切に対応する能力は、コミュニケーション能力の向上につながります。

5. 身体的な健康 当然ながら、体力向上、筋力増強、柔軟性の向上など、身体的な健康効果は大きいです。

6. 精神的な安定 適切な運動は、ストレス解消やメンタルヘルスの改善に効果的です。

 

子供に格闘技を習わせる際の注意点

多くの親御さんが「子供に根性をつけさせたい」という理由で格闘技を検討されますが、以下の点に注意してください:

1. 道場選びが最重要 指導者の人柄、指導方針、道場の雰囲気を必ず確認してください。「根性を鍛える」をうたう道場は避けることをお勧めします。

2. 子供の意志を尊重 親の希望ではなく、子供自身が興味を持っているかどうかが継続の鍵です。

3. 楽しさを重視 特に幼児期は、技術習得よりも楽しさと安全性を最優先にしてください。

4. 成長に応じた指導 年齢と発達段階に応じた適切な指導を受けられる道場を選びましょう。

 

大人が格闘技を始める際のポイント

大人になってから格闘技を始める場合も、根性論に惑わされないことが重要です。

1. 現実的な目標設定 「プロになる」よりも「健康維持」や「ストレス解消」など、現実的な目標から始めましょう。

2. 自分のペースを守る 他人と比較せず、自分のペースで継続することが最も重要です。

3. 科学的な知識を身につける トレーニング理論や栄養学など、科学的な知識を身につけることで、より効果的な練習ができます。

4. コミュニティを活用 格闘技仲間とのコミュニケーションは、継続のモチベーションになります。

 

指導者に求められる現代的な資質

現代の格闘技指導者には、以下の資質が求められます。

1. 科学的知識 スポーツ科学、栄養学、心理学などの知識を持ち、それを指導に活かすことができる。

2. コミュニケーション能力 選手一人ひとりと適切なコミュニケーションを取り、個々のニーズに応じた指導ができる。

3. 安全管理能力 怪我の予防と早期発見、適切な対応ができる。

4. 人格的な成熟 選手のロールモデルとなる人格を備えている。

5. 継続的な学習 常に新しい知識や技術を学び続ける姿勢を持っている。

 

根性論から脱却した格闘技の未来

根性論から脱却した格闘技は、より多くの人に愛されるスポーツになる可能性を秘めています。

1. 参加者の多様化 年齢、性別、体力レベルを問わず、多くの人が参加できるスポーツになります。

2. 技術レベルの向上 科学的なトレーニングにより、全体的な技術レベルが向上します。

3. 社会的地位の向上 暴力的なイメージから脱却し、健全なスポーツとして認識されるようになります。

4. 国際的な競争力向上 世界標準の指導方法により、国際的な競争力が向上します。

 

実践的なアドバイス:どうやって良い道場を見つけるか

良い道場を見つけるための具体的なチェックポイントをご紹介します。

1. 見学・体験の充実 見学や体験を歓迎し、十分な時間を設けてくれる道場を選びましょう。

2. 指導者の資格と経験 指導者の資格、経験、指導実績を確認してください。

3. 安全対策 怪我の予防策、応急処置の体制、保険の加入状況を確認しましょう。

4. 練習環境 清潔で安全な練習環境が整っているかチェックしてください。

5. 生徒の様子 既存の生徒たちが楽しそうに練習しているか、互いを尊重しているか観察しましょう。

 

よくある質問と回答

Q: 格闘技で精神的に強くなることはないの?

A: 精神的な強さは身につきますが、それは根性ではありません。目標達成の経験、自信の獲得、問題解決能力の向上などを通じて、結果的に精神的に強くなります。

Q: 子供には厳しい指導も必要では?

A: 厳しさと根性論は別物です。適切な負荷と明確な目標設定による「厳しさ」は必要ですが、理不尽な精神論は不要です。

Q: 根性がない人は格闘技に向いていない?

A: そんなことはありません。適切な指導と環境があれば、誰でも格闘技を楽しむことができます。

 

まとめ:新時代の格闘技への招待

この記事を通じて、格闘技に対する古い固定観念を払拭し、現代的で科学的なアプローチの重要性をお伝えしました。

重要なポイントをまとめると、

  • 格闘技で根性は身につかない(もともと持っている性質が9割)
  • 継続できるのは根性ではなく、適切なモチベーション
  • 根性論は格闘技の上達を阻害し、怪我のリスクを高める
  • 現代の格闘技は科学的で個人に最適化された指導が主流
  • 格闘技で本当に得られるのは、目標達成能力、自己管理能力、問題解決能力など

あなたが今すぐできること

この記事を読んで、格闘技に対する認識が変わったなら、以下のアクションを起こしてみてください。

1. 道場見学に行く 根性論ではない、現代的な指導を行う道場を見学してみましょう。きっと格闘技の新しい魅力を発見できるはずです。

2. 体験レッスンを受ける 実際に体験してみることで、格闘技の本当の楽しさを感じることができます。

3. 情報収集をする 科学的なトレーニング方法や現代的な格闘技指導について、さらに詳しく学んでみましょう。

4. 周りの人と話し合う この記事の内容を家族や友人と共有し、格闘技に対する新しい視点について話し合ってみてください。

格闘技は、根性を鍛えるためのものではありません。それは、人生をより豊かにし、自分自身をより深く理解し、他者との関係を改善するための素晴らしいツールなのです。

昭和の部活動的な根性論から脱却し、令和の時代にふさわしい格闘技を体験してみませんか?あなたの人生に新しい価値と喜びをもたらしてくれるはずです。

今こそ、古い常識を打ち破り、新しい格闘技の世界に足を踏み入れる絶好のチャンスです。あなたの一歩が、より良い格闘技文化の創造につながるのです。